今月のブックレビュー

顧客ロイヤルティの時代

嶋口充輝 内田和成   同文館出版

顧 客のロイヤルティについてはこれまでも様々な議論がなされてきた。主にそのテーマは「顧客ロイヤルティとはいかなるものか」、「どうすれば顧客ロイヤル ティが獲得、維持できるか」、「顧客ロイヤルティを獲得、維持することでいかなる価値を獲得できるか」などの点にあった。

本書はこれらに関する様々なトピックについて、ケースを用いて解説している。いわば顧客ロイヤルティに関するテーマの現在までの集大成と言うべきものである。本書において言及されているテーマは、 1)顧客ロイヤルティのフレームワーク、2)顧客ロイヤルティのミッション、3)顧客ロイヤルティとスキル、4)顧客ロイヤルティとシステム、5)顧客ロイヤルティの測定となっている。

顧 客ロイヤルティのフレームワークでは顧客価値、顧客ロイヤルティとは何かということについて述べられており、顧客ロイヤルティのミッションでは企業のミッ ションと顧客ロイヤルティについて解説されている。続いて顧客ロイヤルティのスキルでは顧客ロイヤルティの獲得、維持に関しての方法論的解説がなされてお り、続く顧客ロイヤルティとシステムにおいて顧客ロイヤルティを維持獲得するための仕組みを ITと組織的との観点から考察している。最後に顧客ロイヤルティの測定においては定量的に顧客ロイヤルティを計測、検証している。

本 書はいまや広大な範囲に広がった顧客価値・顧客ロイヤルティについて、そのマーケティング分野におけるほとんどのトピックについて網羅されており、顧客ロ イヤルティに関心を持つものにとっては必須の一冊といってよい。また、ケースを用いて具体的に顧客ロイヤルティについて述べているので、これから顧客ロイ ヤルティについて学ぼうとしている人にもお勧めの一冊である。

リピーターをつかむ経営

R ・エリック・レイデンバッハ レジナルド・W・ゴーグ ゴードン・W・マッカラン ( 著 ) 日経リサーチ ( 訳 )  日本経済新聞社

顧 客は製品・サービスをどのような基準で評価をしているのであろうか。それは自らと競合相手が提供する「価値」を比較しているのだ、と本書では指摘してい る。それでは、「価値」とはいかなるものであろうか。いかなる企業も、自らが提供する「価値」の優位性について思うところはあるに違いない。しかしながら 一般的に価値という概念はその解釈する立場によって多様性があるものである。しかしながら価値という概念は明確に定義されることはあまり無い。なぜならそ の概念は明確で揺るぎないものであると、思い込んでいるからだ。本書はまず「(当該製品・サービスに関与する顧客からみた)価値の定義」を明らかにする。 そしてその「価値」を測定し、いかに業務に利用していくかをケースタディと共に詳細に説明している。

本 書で重要なのは、あくまで「価値」判断を行うのは当該製品・サービスに関与する顧客であるという点にある。具体的に言えば、企業の担当者が、顧客はこのよ うに「価値」判断していると考えるのではなく,直接顧客に対して入念にデザインされた調査を行いそれを集約することによって、顧客の「価値」判断を客観的 に把握すべきであると言うことである。その際、顧客に対して直接「当該商品・サービスはあなたにとって価値のあるものですか、またそのように感じるのはな ぜですか」と尋ねてしまうと、尋ねられた顧客を当惑させるので有用な示唆を得られることは少ない。それゆえ多少迂遠に、かつ多くの項目についての評価を収 集しそれを集約させることが肝要である。このように本書は従来の「顧客満足度調査」などの「価値」測定の欠点を指摘しつつ、自らの方法について述べてい る。

惜 しむらくは、情報の集約に用いた多変量解析の手法についての説明があまりにも少ないのである。例えば本文中に重回帰分析における多重共線性についての記述 があるが、この前に重回帰分析とはいかなる分析法かという説明がまったく書かれていない。もちろん重回帰分析自体はとても有名な分析方法あり、まったく知 らない人はそう多くないと思われる。しかし、まったく説明なしに多重共線性についての記述をされても、唐突であるという印象はぬぐえない。親しみやすい装 丁がされているだけにもう少し補足があればと思うと残念である。

しかしながら、上記の点が本書の魅力の多くを損なってしまっているわけでない。従来の「顧客満足度調査」などに不満を感じている方にはぜひ読んでいただきたい一冊である。

これまでのブックレビュー

対話の達人

( 編 ) 株式会社ベルシステム24  プレジデント社

本書は株式会社ベルシステム24が会社設立20周年の記念に行った「ベルエッセイ大賞」の入賞作品を編集したものである。「ベルエッセイ大賞」とはベルシステム24で働くコミュニケーター(「コンタクトセンターで電話応対や E メールの対応をする人」)の実体験を基にしたエッセイに対して送られたものである。

コ ンタクトセンターには様々な顧客がコンタクトしてくるが、大別すれば2つのタイプに分類される。1)商品・サービスの不明な点について質問をしてくる顧 客、2)商品・サービスへの不満への対応を求めてくる顧客である。そのどちらに対してもコミュニケーターがいかに応対に気を使っているか、その様子がよく 分かる。

も ちろん、本書で紹介されている事例はコミュニケーターの心の琴線に触れた顧客ばかりであるので、コミュニケーターが応対した顧客の中でも極端な事例が多い が、ほとんどの顧客に共通した思いが見えてくる。それは、「自分の話を聞いてもらいたい」、「(たとえ完璧なものでないとしても)自分の不満に対して何ら かの対応がほしい」という思いである。そしてコミュニケーターに対して感謝の気持ちを表す顧客に共通しているのは、「自分が直面している不満に対する完全 な対応」よりも「どれだけ自分の気持ちを受け入れてくれて、コミュニケーターが出来うる限りの応対をしてくれたか」という点に対する評価が高いということ である。

CRM に関して、よく話題に上るのは「企業の視点から、企業が顧客に対していかなる対応をしていき、業績を向上するか」である。これには、 CRM シ ステム、顧客管理(セグメンテーション、顧客別対応など)、顧客資産(顧客生涯価値など)などのテーマがあげられる。しかしそれがいかに「顧客の不平・不 満の解消、満足の向上」につながっているかという点に関してはまだ話題に上ることはそう多くはない。「これは、つい見過ごしてしまった重要なテーマの一つ ではないか」、そんな自戒の念を、本書を読みながら呼び起こされた一冊であった。

マーケティング・サイエンス入門

古川一郎・守口剛・阿部誠 ( 著 )  有斐閣アルマ

マー ケティングにおいてマーケティング・サイエンスという分野は、数式による説明が多いためか、なかなかとっつきにくい分野であると感じている方は多いと思 う。その重要性はなんとなくわかっているとしても概説書を見てあきらめの気持ちを抱いてしまった方もいらっしゃるであろう。

本 書は基本的なマーケティング戦略を基に、「客観的なデータと論理に基づいて市場を捕らえる基本的な考え方や具体的な方法を探究する」というマーケティン グ・サイエンスのコンセプトをいかなる場面で、いかなる形で用いていくのかを初心者にも分かりやすく解説してある。もちろん、単に分かりやすいだけでなく バス・モデル(製品の普及を説明するモデル)、ASSESSOR(マーケットシェアを推測するモデル)など有名なモデルについても書かれている。しかしこ れらのモデルも本当に基本となる重要なモデルを丁寧に解説してあるのでじっくり読めば分かるような構成となっている。

基本的なマーケティングの知識を習得し、これからマーケティング・サイエンスについて勉強しようという方には最適の入門書であろう

統合マーケティング戦略論

ドーン・イアコブッチ/ボビーJ・カルダー ( 著 ) 小林保彦・広瀬哲治 ( 監訳 )   ダイヤモンド社

統 合マーケティング戦略についてはこれまでも多くの書籍が出版されている。これは市場の力関係の変化などによってコミュニケーション戦略のあり方が大きく変 わってきていること、具体的には顧客主導型への変化、が大きな原因として挙げられるであろう。それら多くの書籍の中でも本書は現時点でもっとも広い範囲 を、詳細かつ丁寧に解説してあるといってよいであろう。

本書で取り上げているテーマは顧客ロイヤルティの獲得、統合マーケティングと消費者体験、バイラル・マーケティング、スコアリング・モデル、統合マーケティングと Web などである。どのテーマについてもその目的を達成するためのロジックの構成、ケーススタディ等の詳細かつ丁寧な解説がなされており、わかりやすい。

ここでは一つだけ、「第 9 章  顧客利益性と顧客ポートフォリオの診断」について紹介したい。まず本章の目的は顧客利益性の分析の概要を提示することにある。すなわち効率的にコストを 配分するために自らの顧客の利益の分布を把握しようというものである。そのための指標として相対標準偏差(各々の顧客がどれだけ平均から乖離しているか示 す)、ジニ係数(どれだけ顧客ごとに利益のばらつきがあるかを示す)などを挙げている。その後、実証分析を行っている(詳細は本書を参照されたい)。

上にも描いたとおり本書は近年のマーケティングの課題を幅広く網羅している。ぜひ読んでいただきたい。

顧客資産のマネジメント

( 著 ) ロバート・ブラットバーグ、ゲイリー・ゲッツ、ジャクリーン・トーマス ( 訳 ) 小川孔輔、小野譲司  ダイヤモンド社

い ま、「顧客資産」というものが注目されている。これは「企業経営、とくにマーケティングを計画し実行するうえで、関係性資産としての『顧客』を軸とすべき である(監訳者はしがきより)」という考え方から生まれた概念であり、近年、話題となっているブランド資産に相対する概念として捉えられているものであ る。当然、「顧客」資産である以上、 CRM と深いかかわりを持っている。

これまでの CRM の考え方との相違はこのように説明できるであろう。今までの CRM についての考え方には、顧客を維持することを最優先にしなければならないというように誤解されるものもあった。 CRM の黎明期にあってわかりやすい説明を優先した場合においては致し方なかった事態である。「顧客の分類」→「分類された顧客ごとのアプローチ」と単純化された CRM では対応できない事態も出てきていることもまた事実である。

「顧客資産」の考え方は、これから起こるマーケティング戦略の意思決定の場面において重要な示唆を提供するであろう。それは今後の CRM の 最大の目的が「顧客から得られる価値を最大化することにある」とされるであろうと考えるからである。そのためには本書のように顧客資産を顧客獲得エクイ ティ、顧客維持エクイティ、追加販売エクイティの和であるとする(それぞれの詳細は本書参照のこと)ような、「顧客資産」の具体化が求められるのである。

「顧 客資産」という考え方は、生まれてからまだ日が浅くその解釈には諸説ある。そして、それを生かしていくにはまだ解決しなければならない問題も多い。そのな かで本書は「顧客資産」を学ぶものにとっては概念から具体的な施策まで網羅しており、「顧客資産」の入門書として、また参考書として最適な一冊となるであ ろう。

CRM マーケティング戦略

( 著 ) アクセンチュア 三谷宏治、戦略グループ、 CRM グループ 東洋経済

CRM に関するシステムを導入した企業、導入を計画している企業にとって大きな懸案となっているのが「その投資に見合うだけの効果が得られるのか」ということである。その際に考えなければならないのは「導入した CRM ツールをどう使いこなすか」ということになる。実際、導入してから使い方を考えようとしたために、せっかく投資したシステムを有効に活用できていない事例は少ないのが現状である。

それでは、どのように活用すればよいのか。本書はこれらの問いに対する示唆となるような具体的事例が多く掲載されている。特に今まで購入間隔が長く、 CRM による購買の促進があまり無いと思われてきた分野 ( 戸建住宅 ) 、提供するサービスの種類が限られており、ある程度収支構造が固定的な分野(シネマコンプレックス)、今まで CRM というものとはほとんど縁遠いと考えられてきた分野 ( 地方自治体 ) などの事例は一目すべきものがある。

このように本書は、 CRM 環境を有効に活用するための示唆が多く示されている。 CRM の入門書、事例集として最適な一冊である。

また、本書は「 CRM 顧客はそこにいる(ダイヤモンド社)」続編としての位置づけもなされており、同書における CRM の考え方も補章として掲載されているのでまずは補章から読むことをお勧めしたい。

実践ロイヤルカスタマー経営

(著)町田守弘 大竹佳憲 コンピューター・エージ社

FSP についての多くの著作の中で本書を特徴付けるのは流通業における政策全般の視点から書かれていること、全般的・総合的な内容であるという点にある。本書は 大きく(1)ロイヤル・カスタマー経営についての解説、(2)FSPの解説、(3)実際のケースの解説といった部分に大別され、FSPについて総合的な示 唆を提供している。そのためこれからFSPを導入しようとする場合にも、現在のFSPを見直そうとする場合にも、FSPについて俯瞰してFSPというもの に関して考えるのに有用な示唆を与えてくれるのではないだろうか。

ただ、クレーム処理に関しての記述など細かい点では気になることがあった。しかしながら、現時点においては、 FSPについて全般的な知識を得るためには現在の時点で最良の書の中の一つであるといえよう。

POS・顧客データの分析と活用

(著)(財)流通経済研究所 同文館出版

上に紹介したものとは異なりこちらは、もっと具体的、かつ専門的な書籍である。内容としては POSシステムから得られた顧客の購買データの分析事例集となっている。

具 体的にテーマを挙げると(1)販促費の成果に関する分析、(2)プロモーション施策の評価、(3)新製品開発のためのデータ活用、(4)カテゴリー・マネ ジメントのためのデータ活用に、(5)店頭品揃え施策のための顧客データ活用、(6)店舗セグメンテーションのためのデータ活用、(7)コンビニエンス・ ストアにおける来客対応のためのデータ活用となっている。

本書は顧客データの分析事例集なので、顧客データの活用について全般的に網羅されている訳ではない。本書はある程度顧客データ POSデータを扱うための基礎的な知識・技術のを習得していることが必要となると思われる。しかしながら顧客データを有用な資産として活用するための資料として大変有用であることは間違いないのである。

顧客データに関する職種の方は一度ご覧いただきたい。

CRMの実際

(著)古林宏 日経文庫

現在、 CRMに関する書籍は多く出版されているがその多くはケーススタディとシステムに関するものである。本書はCRMに関して、実際のCRM政策をいかに行うべきか、順序だてて解説している。

本書の流れは「ライフタイムバリュー」を軸に CRMの重要性を説明する導入部から始まる。そして顧客データを利用した顧客のセグメンテーションの方法を経て、その顧客データに対するアプローチの仕方、インセンティブの解説にいたる。最後にQ&Aにより、より詳細なポイントの解説をしている。

本書のテーマは CRM に関するテーマの中でも、収集した顧客情報をどのように利用してどうアプローチするかというところに置かれている。実際このような顧客データの活用につい て解説している書籍は多い。しかしながらCRMに関する書籍、特に題名に「CRM」と冠している本にはこのようなタイプの書籍は少ないのである(この対応 の書籍の多くは「データベースマーケティング」もしくは「顧客資産」がタイトルについていることが多い)。そのためキーワード「CRM」からのこのような アプローチに関する情報は得にくいのが現状である。

タイトル通り「 CRMの実際」について知るための入門書として最適である。

ウォルマートに学ぶ データ・ウェアハウジング

ポール・ウェスターマン(著) 須藤晶子 平田真理(訳)

現在 CRMということを考える上でIT、特にデータベースの構築は避けて通れないものである。なぜなら、現在論議の対象になっているCRMはデータに基づいて行われるものが多いからである。

本 書は、ウォルマートのデータ・ウェアハウスをケースとして、データ・ウェアハウスの構築について解説している。具体的にはデータ・ウェアハウスの解説、 データ・ウェアハウスの構築のための施策、データを利用するための組織改革、データ・ウェアハウスの費用対効果などである。ただし題名にウォルマートと銘 打ってはいるが、ウォルマートでのデータ利用について書かれているところは少ない。

それゆえ本書は一般的なデータ・ウェアハウス構築に関する本であるといえる。直接 CRMについて語ったものではない。しかしながら先に書いたとおりCRMを考えていく上でデータ・ウェアハウスについての話を避けて通ることは出来ない。CRMをシステムから論じるときに参考になる本である。

顧客サービス 7つの法則

(著)トム・コネラン ロン・ゼンゲ (訳)伊豆原弓

こ れまでも、本サイトにて顧客維持のための政策について触れた本を種々紹介してきた。その多くは顧客データを利用して顧客を分類する「セグメンテーション」 と顧客と友好的の関係を構築し、維持するための「コミュニケーション」について書かれている。「セグメンテーション」に関する本のほとんどはデータを分類 する手法に焦点がおかれている。それゆえ手法の解説やその利用法などが中心で「用語(数式)が分かりづらい」が「要点が簡潔に」書かれている。これに対し て「コミュニケーション」に関するものは「用語が分かりやすい」が「要点が絞りにくい」。それゆえ一見理解し易いが、応用しにくい。特に売り手と買い手が 互いに相手を確認しにくい?コマースへの応用を考える場合、それは顕著になるであろう。

本書は、?コマースにおける「コミュニケーション」施策についての要点がまとめられていてわかりやすい。それはタイトルにあるように「コミュニケーション」施策について注意すべき点を

1.ETDBW(Easy To Do Business With:付き合いやすさ)思考を実践する

2.印象的なデザインを作る

3.体験を個客化する

4.一貫サービスを提供する

5.直接連絡を促す

6.トラブル対応を得意分野にする

7.個客維持戦略を構築する

の7つの法則にまとめているからである。この法則の詳細については本書を読んでいただくとして、これらの法則からは「顧客維持のためには付き合いやすさを顧客に感じてもらい、『イヤ』な思いをさせてはいけない」というシンプルなメッセージを感じた。

“Webサイトで「サービス」を行う”という感覚は、まだなじみのないものかもしれないがこれからも進んでゆくITの利用において重要ではないかと思う。

エモーションマーケティング

(著)スコット・ロビネッティ クレア・ブランド ヴィッキー・レンツ (監訳)ニューチャーネットワークス

「 サービス」を行うという感覚はサービス業や Webサイトだけでなく、すべての仕事において必要とされているのではないだろうか。もしそうであるならば「よいサービス」とはいかなるものであろうか。それを端的に言い表すことは容易では無いが本書も「顧客サービス7つの法則」と同様にそのひとつの方向を示している。

「エ モーションマーケティング」とは短期的に「感情」を揺り動かして新規顧客を獲得することを目的とする広告などの手法をさすのではない。本書において「エ モーションマーケティング」とは、「企業が顧客を大切にし、配慮していると顧客に感じてもらうことによって、ロイヤルティを獲得し、顧客と永続的な関係を 作ろうとするものである」と定義されている。そして情緒的価値(「時間・労働価値」「エクィティ」「経験価値」)を重要視し、顧客に対するコミュニケー ションにおいて

1. 目的や状況に対する適合性

2. タイミング

3. 送り手と受け手の関係

4. 頻度

5. 知覚価値

を重要な要素としていることも本書の特徴として挙げられる。

「エモーションマーケティング」と題しているのに肝心な「エモーション」についてほとんど触れていないことについては不満が残るが、「個客維持」のための参考 書として重要な本である。いわゆる「サービスエンカウンター」の業務に従事している方以外にもぜひ読んでいただきたい。

顧客ロイヤルティのマネジメント

(著)フレデリック・ F・ライクヘルド ( 監訳 ) 伊藤良二  ( 訳 ) 山下浩昭

ロイヤルティ戦略論

(著)フレデリック・ F・ライクヘルド( 監訳 ) 伊藤良二  ( 訳 ) 沢崎冬日

企 業の業績を評価する方法は様々である。それゆえ、「良い企業」とは何かと問われたとき、すべての利害関係者(ステークホルダー)にとって唯一の基準となる ような指標は無いように思えることもある。特に投資の面から考えればそれは「(金銭的)利益」であり、さらに限定すれば短期的な(金銭的)利益に集中して いると考えるのが自然かもしれない。しかし、筆者フレデリック・ F・ライクヘルドはこの見方に対して警鐘を鳴らす。いわく「ロイヤルティ」こそが真に企業の価値を高めるものであると。

「顧客ロイヤルティのマネジメント」において筆者は、顧客、株主、従業員の3つのテークホルダーのそれぞれの観点からロイヤルティの重要性とその測定方法、そしてそれを得るためにマネジメントが何をすべきかを論じている。 CRM に関することとして特に注目すべきは第1章~第4章にかけての部分である。様々の成功事例が書かれているがテーマとなっているのは「顧客維持より新規顧客 の開拓を優先させることは、効率が悪いばかりか顧客のロイヤルティをも損ね、損失すら生みかねない」ということである。今となっては、これらの主張は私た ちCRMに関わるものにとって自明の命題である。しかしいまだに多くの企業においてそれらが実行されていないこともまた知られているところである。

では、「ロイヤルティ」を得るためにはいかなる方策を行えばよいのであろうか。昨年に日本版が発売となった「ロイヤルティ戦略論」においては、ロイヤルティ獲得のための考え方を「六つの原理」として、これらについての解説を中心に論が展開されている。「六つの原理」とは。

1. Win-Winの関係を目指す。

2. 選別は重要である

3. シンプル イズ ベスト

4. 適切な評価・報酬制度を

5. 熱心に耳を傾け、率直に語る

6. 行動を言葉で説明する

である。

構成、内容ともに即現場で応用ができるといった本ではないが、顧客のロイヤルティを得ることが企業活動の全体(特に会計)に対していかなる影響を及ぼしているのかを考える際に非常に重要な示唆を与えてくれる本である

「ゴンゾー・マーケティング」

クリストファー・ロック ( 著 )  山形浩生 ( 訳 )

「ゴ ンゾー」の由来は自ら対象に参加し、そこに関わり主観的に何かをつかもうとするジャーナリズムの方法論「ゴンゾー・ジャーナリズム」にある。ゴンゾー・ マーケティングとは、コミュニティの一員となりその一員と認められることにより信頼を得て「ソコからものを買うように」なってもらうという手法である。

こ れまでのマスマーケティングの理論を、そのままインターネットにおけるマーケティングに応用しようとして失敗すること多い、それはなぜなのだろうか。その 理由について著者は「マーケティングと思って、売りつけようと思ってアプローチする限り、誰も振り向いてくれないよ」と述べる。その上で「マーケティング と思うな。まず、仲間になれ。インターネットで関心を集める方法はそれしかないのだ」という。(引用は訳者あとがきより)

これに対してはさまざまな反論が出てくるだろう。実際、訳者にしてもこれらの発想に対しては正しいと認めていながらも、「第三者的に見たそのサイトの信頼性」(例:企業批判サイトへの当該企業の参入)や、その実効性のなさに つ いてあとがきにおいて批判している。

その批判的でジョークが多く、落ち着かない文体(例えるなら「ライ麦畑で捕まえて」)やその姿勢から反発を感じる方も少なくないであろう。しかしながらその批判のほとんどは正鵠を射ており、耳を傾ける必要はあるのではないであろうか。

インターネット社会のマーケティング

石井淳蔵・厚美尚武(編)

副題に「ネット・コミュニティのデザイン」とあるように、「ぷれままクラブ」「この指とまれ!」などのコミュニティサイトのマネジメントや既存ビジネスとの関わりについて述べられた内容となっている。

上記の二つのサイトに加えて、韓国の「アイラブスクール」、「@ cosme 」などをケースとして、それぞれのコミュニティサイトについてコミュニティサイトがどのように発足し、成長してゆくのかを当該サイトの主催者のインタビューを交えて考察している。

しかし、本書で取り上げられているのはあくまでコミュニティサイト(「リニジ」のようなネットワーク RPG も 含む)の運営に関するものが主である。「既存のビジネス」側の立場から見たコミュニティサイトとの有用な「かかわり方」について明確なことは書かれていな い。それでもこれらのコミュニティサイトに関する考察は、インターネットを介した企業と人のコミュニケーションを考える際の示唆を与えてくれる。

インターネットの歴史はまだ浅く、商目的の利用もまだ「道半ば」にも達していない状況である。インターネットとマーケティングのかかわりについて、我々にはもっと多くの考えねばならない課題があることを再確認させられる本である。

マスタリング・データマイニング 理論編、事例編

マイケルJ .A.ベリー/ゴードン・リノフ(著) 江原淳 / 斉藤史朗 / 佐藤栄作 / 清水聰 / 守口剛(共訳) 海文堂

本書は「理論編」、「事例編」の各 1冊ずつの独立した書籍になっており「理論編」でデータマイニングの解説および業務に置ける位置づけを、「事例編」では応用の詳細なプロセスのケーススタディについて解説している。それぞれの構成は以下のようになっている。

<理論編>

・データマイニングの定義から本書で扱うべきデータマイニングの位置づけ

・データマイニングへのアプローチ法について

・データマイニングを中心としたビジネスのワークフロー

・データマイニングをCRMで利用する際のさまざまな注意点

・データマイニングの代表的なアルゴリズムについての説明

・データの前処理に関する説明

・実際にデータマイニングで予測モデルを構築するやりかた

・実際に企業活動の中にデータマイニングを組み込むためのノウハウ

<事例編>

・カタログ通信販売業者のケーススタディ

・オンラインバンキングのケーススタディ

・無線電話業のケーススタディ

・遠距離通信業のケーススタディ

・スーパーマーケットのケーススタディ

・印刷業のケーススタディ

・データマイニングとプライバシー

デー タマイニングという言葉が知られるようになってからかなりの時間が経過した。しかし、データマイニングというものがいかなる手法であるのか、その具体的な 利点や用法については広く知られてはいない。これまでのデータマイニングに関する書籍の多くはデータ処理のアルゴリズムに焦点を当てたもの(そのほとんど が書店の統計学のコーナーに陳列されている)、もしくは簡潔にプロセスが説明されたケーススタディがほとんどであった。すなわち実際の業務とデータマイニ ングの手法を結び付けるような知見を紹介したものは少なく、それゆえデータマイニングが有用であると知っていても(知識としてあったとしても)その利用を 見送ったり、利用方法を誤ったりするケースが発生してきたと思われる。本書は業務プロセスの中で収集したデータからどのようにして顧客の動向を把握し、施 策立案のための重要な情報を得るのかという観点から書かれており、その間隙を埋めるための知見を得るのに有用である。

カスタマー・エクイティ

ローランド・T・ラスト/バレリー・A・ザイタムル/キャサリン・N・レモン

製品中心のマネジメントから顧客中心のマネジメントへと転換していくための重要な概念として、カスタマー・エクイティが注目されている。それではカスタマー・エクイティとはいかなるものなのであろうか。
カスタマー・エクイティの定義については様々な考え方があるが、その多くは無形の「資産」を会計上の資産として評価しようという試みからなされている。本 書におけるカスタマー・エクイティは「企業の『カスタマー・エクイティ』とは、その企業の顧客のすべての顧客の(物価上昇分を割り引いた)生涯価値の合計 である」と定義している。そして、それを増大させるドライバーとして客観的・合理的な価値を指す「バリュー・エクイティ」、感情的・主観的な価値を指す 「ブランド・エクイティ」、顧客維持プログラムやリレーションシップ構築から生まれる「リテンション・エクイティ」をあげている。本書の構成はこれらがい かにカスタマー・エクイティと関連していくかを解説し、その後にカスタマー・エクイティをどのように測定、評価してゆくかの説明を行うという形になってい る。
本書には具体的なケースはほとんど掲載されておらず、カスタマー・エクイティの概念とそのマネジメントについてのフレームワークを提供しているのみである が、簡潔に要点を押えてあるため内容を理解しやすい。また、会計的なアプローチよりもマーケティング的なアプローチを中心に構成されているので
マーケティングの観点からカスタマー・エクイティについて考える際の、カスタマー・エクイティの解説書として多くの示唆を与えてくれるであろう。

顧客識別小売業

ゲーリー・E・ホーキンス (監訳)三菱商事コンシューマー事業本部マーケティング事業部

日本においてもFSPというものに対する認知度は上がっており導入する企業は増えてきているがその運用に関しては疑問や不審が少なくない、といった日本の小売業のFSPの現状を知るためのヒントになるのではないかと思い取り上げた。
本書の主旨を簡潔に表すと「売上に対する貢献に応じたサービスを行うことが小売業にとって望ましい施策である」ということになる。具体的には「顧客全体に 対して均一に行うプロモーション」から「FSPやPOSから得られるデータを利用して優良顧客を発見すること」そして「優良顧客に対する手厚いサービス」 へと至る施策の転換についてである。本書の構成は「購入金額による顧客の分類する手順・方法」とそれに伴う「分類顧客別のサービス施策」についての解説で ある。そして、それらを概念図や数字による説明や簡潔な文章によって説明することが本書の特徴であり利点となっている。
タイトルや装丁を一見すると、何か流通業に関する複雑かつ抽象的・概念的な経営理論について書かれている本であるように思えるが、実際はFSPについての 基本的な事項のみをまとめたものである。それゆえ、FSPの立案やPOSデータの分析などを生業にしている方には物足りないかもしれない。しかしながら FSPの概説書としての内容のボリュームは充実しており、初めてFSPについて触れる方がFSPについて十分理解ができる内容となっている。

進化するデータベースマーケティング

中澤功 日経 BP社

本書の特徴はダイレクトメール、電話(テレマーケティング)、 Eメールの3つのメディアの特長や欠点とその生かしたかたについて重点をおいて論が展開されていることと、全体を通じて「データベースマーケティング」についてかなり広範囲に抑えてある点にある。

顧 客とのコミュニケーションチャネルとしてのメディアについては、マスメディア(一方向)と双方向メディアと対比させているものもある。しかし本書では、ど のような場面でマスメディアを用い、どのような場合に双方向メディアを用いてコミュニケーションを図るのかについて、その片方だけを取り上げるのではな く、どのように組みあわせて使うのかという視点で詳細に書かれている。そしてこの点が本書の特徴となっている。

特 に、筆者の専門分野であるコミュニケーションチャネルについての分析は詳細かつ的を射ていてわかりやすい。しかし、著者も本文中に示している通りデータ分 析の項目となると少し不足している点も見られるということが上げられる。とはいえデータベースマーケティングの内容が全般的に網羅されており、その全体像 を知るのに適した所であることは間違いない。

お客様がまた来たくなる ブーメランの法則

ファーガル・クイン(著) 太田美和子(訳)

こ の書籍が言わんとすることはただ一つ、「お客様の視点で物事を見るために、お客様の視点と同じところに視点を置かねばならない」という事だけである。この ことが意味するのは量的なデータが顧客の欲するところのものを捉えられないということではなく、それを補完するデータとして、顧客と対面する事によっての み得られるデータがあるということなのである。

そしてなにより、本書を特徴付けているのは「お客様から○○という指摘があった」ので「このようにした」ら「このように改善された」という事がきちんと述べられていることにである。それゆえ、内容がわかりやすく受け入れやすい。

サービス・エンカウンタの重要性についてもう一度見直すためにはうってつけである。

日本のデータベースマーケティング 江尻弘  2000 年 中央経済社

デー タベースマーケティングを扱った本の中では「データベースマーケティングの日本における統計的実態」,「日米のデータベースマーケティングの比較」,「業 種別のデータベースマーケティングの現状」など,データベースマーケティングについて他の書籍とは異なった観点から書かれている.

もちろん,データ自体は 1999 年 のものなので少し古い感は否めないが,このようにデータベースマーケティングを数的・客観的に捉え,全体的・俯瞰的に捉えた書籍は他に例がない.またデー タベースマーケティングに関する文献についてもまとめられており,「データベースマーケティング」を研究する上で重要な資料となっている.

「第 1 章: 21 世紀のマーケティング新次元」に関しては異論も多いことと思うが,「データベースマーケティング」そのものについて言及したい場合にはぜひとも参考にしていただきたい文献である.

データベースマーケティング実践ガイド 荒川圭基  2002 年  PHP 研究所

上記の文献とは異なり,こちらは「データベースマーケティングとは何か」,「データベースマーケティングの利点とは何か」,「データをいかに分析・活用するのか」といったデータベースマーケティングの文献としてはオーソドックスな内容となっている.

著者が行ってきた,データベースマーケティング手法のコンサルティングの経験から書かれているためか,事例についての考察は的を射ていて分かりやすい.また,以前より重要項目として, Resency (最新購入日), Frequency (累計購入回数), Monetary (累計購入金額)に明確に言及した著者の姿勢はここにおいても変わっていない.

実務家が記したデータベースマーケティングの文献の中では最新の文献の一つなので,データベースマーケティングを行っている,またはこれからデータベースマーケティングを行おうとしている実務家の方々には大変に分かりやすく,参考にしやすい文献である.

顧客満足を超える One to One CRM 戦略 野村隆宏(編著)日刊工業

第1章「 CS を超える企業戦略」で従来の CS に対する懐疑,リレーションシップの重要性について述べ,第 2 章「 CRM ソリューション」でコールセンター・ EDI のシステムについて説明し ,第 3 章「 CRM ケーススタディ」でコールセンター・ EDI の成功事例を紹介するといった構成になっている.

内容はコールセンターを中心としたカスタマー・コミュニケーションについてである.発行年( 2000 年 4 月)にしてはシステムの内容は古く感じられるが,第 1 章の「 CS 中心から CRM 中心へ」の説明には頷ける部分が多かった. CRM についての考え方の変化を時系列で捉える上で参考になるであろう.

顧客マネジメント戦略

スタンリー・ブラウン(著)

プライスウォータハウスクーパース CRM グループ 東洋経済

 いかにして顧客を知り,それを業務にどのように生かすのかというテーマを中心に「対顧客戦略」について書かれている.

第 1 部「カスタマーケア実現のための基礎」で顧客について以下に情報を集め,整理し,管理するかについて述べ,第 2 部『戦略的カスタマーケア実現へのルートマップ』でそれをいかに実行に移すかについて考察している.

ただし, CRM における Management の部分を前面に押し出しており, Relationship についてついての説明・考察に関してはやや物足りなさを感じる.

それを差し引いてもテーマについて詳細に考察されており,説明も簡潔ですっきりしているので CRM 「戦略」を学ぶための参考書としてよい本であると思う.

CRM 実践顧客戦略

( 著 ) ポール・グリーンバーグ  ( 訳 ) 齋藤英孝

著者はe コマースについてのコンサルタント会社の上級副社長であり,本書もコンサルティングファーム,システムベンダーから見た「 CRM 」について書かれている.

本書は, CRM の定義から始まり, eCRM と CRM について,販売管理(とくに SFA )システムとパーソナライゼーション,パートナー・リレーションシップ,コールセンター・ ASP などの CRM システムの内容,導入に至るまで,広範囲な内容となっている.

特に多様な解釈をされる「 CRM の定義」について他の書籍のように著者が定義づけを行わず CRM の最前線で活躍する実務家による様々な解釈を取り上げているのが特徴的. CRM についての入門書を読み終わってもう一歩踏み出したい方にはお勧めである.

た だし難点を挙げると,途中でリファレンスのように企業名と簡単な紹介を並べただけの箇所が多く少し読みづらい部分がある.また,アメリカで出版された書籍 の邦訳であるため,(当たり前ながら)ほぼアメリカの企業についてしかかれておらず.この内容がそのまま日本の企業に通用するか疑問に思わせる部分もあ る.

概説書の内容からさらに理解を深めたいと考えている読者向きの書籍である.

マーケティングのためのデータマイニング入門

( 著 )SPSS ( 訳 ) 杉田善弘・櫻井聡 東洋経済新報社

こちらも CRM についての概説書を読み終わった読者向けの書籍である.ただし「 CRM 実践顧客戦略」が「 CRM とはいかなるものか」という問いに対する答えとするならば,本書は「 What's CRM 」を理解した上で「 CRM のために何をすべきか」,その中でも「データから顧客の情報をつかむ」という面に特化している書籍である.これからデータマイニングについて学ぼうとする方には,良い入門書であるといえるであろう.

た だし、あくまで量的データを扱う手法についての書籍であるので、ある程度データから知見を読み取るスキルが必要となってくる.また,分かりやすく説明され ているとはいえ,後半において見出しに統計の専門用語が頻出するので,それに対して抵抗を感じる読者も少なくないと思われる.

これらの点をクリアーすれば,CRMにおけるデータマイニングの利用法から実際の利用にいたるまでが丁寧かつ簡潔に説明されているので,データマイニングの入門書として統計についてあまり詳しくない読者にでも分かりやすい内容となっている.